元気なうちに決めて準備すること

人間の判断力、新環境への順応力は平均75才までです。

  • @老後は誰と暮らしたいか。
  • A老後はどこで暮らしたいか。
  • B万一のときの財産管理は誰に頼むか。成年後見を準備するか。
  • C自分の財産は老後どうしたいか、誰に相続させるか。
  • D遺言執行者は誰にお願いするか。

[成年後見制度について]

例@ 一人暮らしの母が認知症ぎみになってきて、物忘れが激しくなった。
例A 高齢の父が一人で暮らしている。悪徳業者にだまされないか心配。
例B 一人暮らしの私、今は大丈夫でも将来、健康に自信がなくなったとき財産の管理が心配。

上記のような不安を解消するため、財産管理に関する制度が成年後見制度です。
判断能力が低下した高齢者に代わって家族や指定した第三者に財産管理を任せることができます。

また元気なうちに本人の意志で将来、財産管理を任せたい人と事前に契約する[任意後見契約制度]があります。

さらに、体が不自由になってしまった高齢者のために[財産管理委任契約]という制度もあります。私たちは上記のような財産管理に不安のある方のため、成年後見のご相談に応じております。

成年後見制度の弱点はこちらをご参照ください。

成年後見とは

判断能力が十分でなくなったとき本人を守る制度  認知症や精神しょうがいなど判断能力が十分でない方をできる限り本人の意思や希望を尊重しつつも、法的に保護する制度です。 後見者が本人に代わって、財産の管理をしたり、契約をしたり、契約を取り消したり、介護や医療が受けられるようにする、などの支援をします。

成年後見の基礎知識

法定後見人制度と任意後見人制度にわかれます。

法定後見人の、3つの役割
補助(もの忘れなどが進み、重大な契約を一人では行うことが不安な、判断能力が十分でない方)

保佐(日常の買い物などはできるが、重大な契約を一人では行うことができないなど、判断能力が著しく不十分な方)

後見(日常全般に援助が必要で、判断能力が全くない方。被後見人になると選挙権がなくなり、会社の取締役や弁護士、医師などの業務ができなくなります)

任意後見制度は、いま現在、判断能力がある方が、将来、病気や認知症で判断力が衰えたときに備えて、信頼する人に任意後見人になってもらい、財産管理や施設入所などの支援をしてもらうように、契約しておく制度。
 その後、判断能力が衰えたとき、家庭裁判所に申し立てをし、許可されれば後見人としての支援が開始され、任意後見人を監督する「任意後見監督人」が選ばれます。

申請できる人:
 本人、配偶者、四親等(いとこ、姪甥、姪甥の子供)までの親族が家庭裁判所に申請します。親族がいないときは自治体の長が申請します。
後見人になる人:
 親族のなかで親身になってくれる人や、司法書士や弁護士、あるいは福祉の専門家や公益法人などの法人が選ばれることがあります。

後見人は2か月に一度ほど、家庭裁判所に本人から預かったお金の収支を報告します。その労力に対してある程度の料金が本人から支払われます。

手続きの流れ(3〜6か月)
@ 家庭裁判所へ申し立て:
  申請書類と本人、成年後見人(補佐人、補助人)候補者の戸籍、住民票などの書類を提出。
A 家庭裁判所の調査:申立人、本人、後見人候補者が家庭裁判所に呼ばれ、面接や親族の意向などを聞かれます。
B 本人の判断能力の鑑定:補助は医師の診断書で判定。補佐と後見は裁判所が必要とすれば、医師に本人の精神鑑定をさせます。その場合は5〜10万の費用がかかります。
C 後見開始の審判、後見人の選任:
  申請した後見人が選任されることが多いのですが事情により、弁護士や司法書士が選任されることがあります。
D 法務局へ登記:
  裁判所から審判書謄本をもらい、法務局に成年後見登記を行い、証明書を取得します。

後見人のすること
財産管理・身上監護
  • ● 預貯金・不動産等の財産の管理
  • ● 受診、入院を支え介護が必要なら介護保険サービスの手続き、契約や管理をし、施設入所など生活の配慮、保護のために働きます。
  • ● 本人が快適に暮らすための不動産購入や貸借の契約。家屋の改築や補修。
  • ● 入院の手続き。介護や医療への支払い。

成年後見の必要なケース

  • ● 預金の引き出しがおぼつかなくなって、助けが必要になった。
  • ● 高価な買い物や必要ない工事、通販などで財産が失われそうだ。本人の意思に加えて同意権、取消権、代理権が必要だと判断されたとき。
  • ● 認知症になった父が隣の人に頼りきり。通帳も預けてしまい、預金を勝手に引き出されている。
  • ● アパートなどの不動産の管理が本人では無理になった。
  • ● 知的障害を持つ子が、両親なきあとでも生活できるようにしたい。
  • ● 父の相続人のひとりである母の認知症が進み、遺産分割協議ができないで困っている。
  • ● 入院の手続き。介護や医療への支払い。
訪問販売で高価な着物をどんどん買う【補助のケース】
軽度認知症の母が必要のない呉服を買うので、補助人である長男が10万以上の物品を買うときに、「同意見付与の審判」を申し出た結果、母が10万以上の買い物をしても取り消せるようになった。 日常の食料品などは「日常生活に関する行為」で補助人の取消権は認められませんが、この場合は本人の意思があっても10万以上の買い物には、補助人の同意が必要」と家裁が判断して本人の財産を守ろうとしたのです。

家を売って母と同居したい【保佐のケース】
認知症になったので次男一家と同居を始めたが、老朽化しており住めなくなり、家を売ることに。次男が補佐審判の開始とともに、建物を売る「代理権付与の審判」を求め、保佐人に認められて、家を売ることができた。 保佐人の同意を得ないで、本人が安く家を売った場合、後からでも取り消すことができます。

入院費用のため定期預金を解約したい【後見のケース】
10年前から認知症で娘の顔もわからないが、入院費用(看取りを想定して個室に入れたい)に本人の定期預金を解約しようとしたが銀行に断られた。後見開始の審判が申し立てられ、いつも介護に当たっていた娘が認められて後見人になって、預金を解約でき、無事入院できた。 後見人は本人の支援はしますが、食事づくりや実際の介護をする義務はありません。(民法第858条)医療上の決定、たとえば胃ろうを設置するか否か、などは後見人の職務ではありません。

司法書士の成年後見のサポート

 
  • ● 後見人の申し立て書、申請書づくり。
  • ● 後見人、保佐人、補助人になります。
  • ● 任意後見を締結して、適当な時期がきたら後見人となりサポートします。
  • ● 家裁の決定が出るまでのあいだ、見守り契約や、任意代理契約をして、本人を守ります。
  • ● 死後事務委任契約で、葬儀、埋葬、各種手続き、債務弁済、家財の処理などのご希望に添います。

後見制度のメリットと課題

    メリット
  • ● 家庭裁判所や、法律家、専門家の関与、監督人の監査などで、本人の財産が守られ、詐欺や経済的虐待を防ぐことができます。
  • ● 大きな財産の売買、移転などでは銀行の承認と手続きがスムーズに進みます。
  • ● 家族のなかで後見人が決まることで、兄弟姉妹の介護の役割分担がうまくいったり、協力体制ができる。
    課題
  • ● 子供たちのひとりが財産を管理するということで、兄弟姉妹間の対立の火種になることがあります。
  • ● 申請が複雑で難しく、期間も長く、費用も高いので、利用が進みません。
  • ● 施設などと契約を結ぶのは認められているのに、施設でうまくいっているのかと観察する本人との面会や、施設の視察などは「事実行為」として認められない、という矛盾した面があります。
  • ● 後見人、監督人の労賃を、本人が払い続けるのが経済的に大変。
  • ● 医療行為の決定、手術の同意や終末期医療の選択は、後見人にはできません。
  • ● 家庭裁判所が決めた範囲でしかお金が使えず、本人が「孫の入学祝い」「友人の香奠」を望んでも認められないことがあります。
  • ● 一般に豪華な食事や旅行などの、付き添い費用などは認められません。

成年後見Q&A : ネズミ講に夢中な義理の娘が後見人を申請

Q: 長男の死後10年、父母と2世帯同居してきた長男の妻が、母が認知症になると母の成年後見をしたいと言い出しました。私は亡くなった長男の妹ですが、長男の妻は悪質なネズミ講に参加し失敗し、私に借金を申し込んできたことがあり、いまもやめていないと中学生の姪から聞いているので、母の財産も消えてしまうのではと、不安です。

A: いったんネズミ講にとらわれると、なかなか普通の仕事に戻れないようです。義理の姉の娘である姪御さんが、そう訴えているのなら、ここは真剣に娘であるあなたが、成年後見の申請をして、お母様の財産と介護体制を守ったらどうでしょうか。  借金の事実や、姪御さんの証言などで義姉は母の後見人にふさわしくないと証明できると考えます。あなたが後見人になることは、可能だと思います。