遺言とは

想いを叶え、争いをさける、生涯に1回しかないメッセージ

遺言がなければ、遺産は法定相続の順位で分けられます。しかし「妻だけに家と財産を残したい」「財産を社会貢献のために役立てたい」など遺言が書かれていれば、故人の意思が優先されます。 1に自分の思いを叶えるため、2に、相続の争いをさけるために遺言は大きな実行力があります。

さて、家族の悲劇の最たるものは「争続」と言えます。遺産分割協議がうまくいかないと、家庭裁判所で調停が開かれ、それでもまとまらないと家裁の審判を仰ぎ、裁判で対立する同士が闘います。怒りと悲しさと膨大なストレスがふりかかり、お金をついやし家族の仲を裂いて、だれにも一生涯の心の傷を残します。 自分の人生のあとに「争続」を残さないため、高齢期に入ったら遺言を書くことが現代の家族への思いやりとなっています。

遺言の必要なケース

絶対に必要なケース
  • ◎ 子どもがなく妻(夫)に全額あげたい。だが、法定相続人がほかにも存在する。
  • ◎ 長年、秘めてきた妻以外の女性にも、何とか分け与えたい。
  • ◎ 妻亡き後、事実婚した女性にも妻並みの遺産を与えたい。
  • ◎ 介護で尽くしてくれた恩人に遺産を分け与えたい。
普通の方でも、波乱の人生でも遺言は必要です
  • ● 年齢が65歳以上 (家族をモメさせないために)
  • ● 2人以上の子どもがいる場合、以下のプラスアルファがかさなれば、遺言の必要性がどんどん高まります。
       +α:不動産など分割のむずかしい資産が多く (モメる原因)
       +α:子どもたちの仲が悪い (仲良くても心配なのに、まして……)
       +α:相続人の経済格差が大きい人(心配な子がいる)
       +α:配偶者の遺産を相続している人(子供は喧嘩しやすい)
  • ● 複数回結婚して、それぞれに子どもがいる人(モメる火種は遺言で消しておく)
  • ● 会社を経営している人(事業承継は重要問題です)
  • ● アパート、マンションなどの賃貸物件を所有している人(上に同じ)
  • ● ペットにも遺産を残したい。
  • ● 葬儀や墓に自分なりの注文がある(葬儀の多様化もすすんでいるので)
  • ● 親族以外にも遺産を残したい人がいる(思いをとげるには遺言書が不可欠です)

遺言の種類

遺言は15歳以上で書く意思がある人ならだれでも書くことができますが、方式に添った書き方でないと無効になり、係争のもとになります。

自筆証書遺言:手書きで自分が書き、日付を示し署名捺印し、自分で保管します。家族に保管場所を告げます。遺産に不動産があれば所在、地番など納税証明書と同じ記載が必要です。
亡くなったとき:家庭裁判所で相続人などの関係者立会いのもと、開封し検認手続きを経なければいけません。

公正証書遺言:公証人が遺言の内容と遺言者の意思を確認しながら作成し、証人2名が立会って遺言者ともども署名押印したあと遺言書の正本、謄本を遺言者に遺言書原本は公証役場に保管されます。
亡くなったとき:遺言執行者や相続人が家庭裁判所を通さず相続人に通知の上、相続手続きができます。

秘密証書遺言:パソコンや点字、代書(代書した人の住所、氏名が必要)で書き、遺言者の署名、押印したものを封じ(同じ印鑑で封印)公証役場に行き、公証人が提出日、遺言者の申述を封紙に記載して、遺言者、証人とともに署名、押印します。内容は秘密にできます。公証役場では預からず、遺言者が保管します。
亡くなったとき:家庭裁判所で相続人など関係者立会いのもと開封し、検認手続きをしなければいけません。

特別の方式の遺言
 死亡危急者遺言:疾病などで死亡が迫るとき、病床などで作成する。
 船舶遭難者遺言:遭難事故などでの遺言。
 伝染病隔離地遺言:伝染病で行政により隔離された場所での遺言。
 在船者遺言:船に乗船中の遺言。

遺言でできること

  • ● 子の認知:婚姻外で生まれた子を自分の子として認めること。
  • ● 未成年者の後見人の指定、後見を監督する後見監督人を選ぶこと。
  • ● 相続人のなかで、自分に虐待や侮辱を与えたり、非行で甚だしく苦しめた者がいる場合に、相続の資格を奪う「廃除」ができます。また、いったんした廃除を取り消すこともできます。
  • ● 法定相続分以外の相続分を指定できます。まただれかに委ねることができます。
  • ● 生前贈与を相続財産の計算に入れない指定をできます(特別受益の持戻しの免除)。
  • ● 遺産の配分を指定し、その指定を誰かに委ねることができます。
  • ● 相続人に未成年者や、闘病中の方、すぐの分割が実現すると住むところがなくなるなど、問題が予想できる場合は、五年以内の遺産分割の禁止ができます。
  • ● 相続した財産に欠陥があった場合、相続人同士で減額分を補うように指定できます(相続人相互に担保責任の指定)
  • ● 遺留分減殺方法の指定:遺贈した財産が、減殺される割合について指定できます。
  • ● 遺贈:遺言で個人や法人に、財産を無償で与えること。
        包括遺贈:遺産の全部あるいは、ある割合を与えること。
        特定遺贈:特定の財産を与える場合。
         負担付き遺贈:特定の義務を果たす条件で与えられる。
  • ● 寄付:財団法人を設立させるために必要な寄付を行う。
  • ● 信託:個人や法人に財産を信託できます。
  • ● 生命保険の受取人の指定や変更。

遺言の執行者、祭祀継承者
 ● 遺言執行者(遺言を実際に実行する人)の指定、指定の委託。
 ● お墓を守り供養をする人(祭祀継承者)を指定できます。

遺留分権利者と遺留分

相続人の組み合わせ 法定相続分
配偶者と直系卑属(子や孫)
配偶者 2分の1
直系卑属 2分の1
※子が複数のときは均等に分割する
配偶者と直系尊属(父母や祖父母)
配偶者 3分の2
直系卑属 3分の1
※父母が二人とも健在の時は均等に分割する
配偶者と兄弟姉妹
配偶者 4分の3
直系卑属 4分の1
※兄弟姉妹が複数の時は均等に分割する
※異父母の場合は同父母の兄弟姉妹の相続分の2分の1

司法書士のサポート
● 公正証書遺言の証人としての立会い
 公正証書遺言はあらかじめ司法書士が公証人と打合せた上で遺言書原稿を事前に作っておきます。遺言当日は遺言者と証人2名が同席しているところで、公証人が遺言書を読み上げて遺言者の意思と相違ないか確認します。証人には未成年者、推定相続人、受遺者、これらの配偶者、直系血族はなれません。
● 遺言の保管と、遺言者との連絡。
 遺言書を書いたはずなのにみつからない、となると大変です。遺言書の保管をし、遺言者の状態(健康状態、施設入所)などを把握しているのも大切な役目です。
● 遺言執行者の受任
 遺言書が効力を発揮するとき、相続人ではない第三者の遺言執行者が遺言内容を相続人に告げることで遺言執行がすみやかにできます。
● 自筆証書遺言の場合、検認手続きの書類作成、家庭裁判所への書類提出をお手伝いします。

遺言のメリットと限界

メリット
● 相続がスムーズ:遺産分割協議には、調査、財産の洗い出し、相続人の集合など大きな手間がかかりますが、遺言があればそれらの手間がいらず、相続人はスムーズに相続が実行できます。
● お世話になった方に残したい。寄付したい。財団をつくりたい、という想いもかなえられます。
● 法定相続人ではない方、たとえば同居して介護を担った長男の妻、内縁の妻は法定相続人ではありませんが、遺言があれば相続させられます。

限界
@ 遺言はもっとも優先されますが、相続人全員の同意があれば、遺産分割協議をして、遺言とは違う相続もできます。
「内妻にすべてを」という遺言に、子供たちが怒り、内妻も困り果てて相続を辞退し、結局遺産分割協議になるという例もあります。
A 遺言では二次相続以降の指定はできません。「自分が死んだら妻へ、妻のあとは長男へ引き継がせたい」と思っても、二次相続以降の相続は、妻自身が「全財産を長男へ」という遺言を残さなくては無理。二次相続以降は、相続した人が自由にできるのです。
「先祖代々の土地は長男に、長男が死んだら、嫁にではなく、確実に孫が継ぐようにしたい。妻の親戚に渡ると困る」というのも無理です。

二次相続以降の指定ができるのは信託です。後継ぎ遺贈型受益者連続信託などと呼ばれています。

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「相続」が成功するか、あるいは相続変じて「争続」となってしまうかの鍵は、遺言書が握っ ています。
もし遺言書がなければ、「法定相続」になります。法定相続の要点は次のとおりで す。

■配偶者はつねに相続人 親族なら誰でも相続人になれるわけではありませんが、配偶者は常に相続人となります。 配偶者以外の相続人は、民法で次のように定められています。

■誰がもらえるの?(配偶者以外の相続人の優先順位)
 第1順位 被相続人の子( 実子、養子)、子が死亡しているときは子の子ども
 第2順位 第1順位該当者がいない場合、被相続人の父母(実親、養親)又は祖父母
 第3順位 第1、第2順位該当者がいない場合、被相続人の兄弟姉妹
 兄弟姉妹が死亡している場合は、兄弟姉妹の子ども

■どれだけもらえるの?(法定相続分の割合)
遺言がなければ、民法に定められた遺産の相続割合は次のようになります。
 @配偶者と子どもの場合配偶者2分の1、残り2分の1を配偶者以外の第一順位者が等分分割。
  非嫡出子は嫡出子の2分の1、異父母兄弟、姉妹は、全血兄弟姉妹の2分の1。
 A配偶者と父母または祖父母の場合 配偶者が3分の2、残り3分の1を人数で等分分割
 B配偶者と兄弟姉妹の場合 配偶者が4分の3、残り4分の1を人数で等分分割。

■どうやって分けるの?(遺産分割協議)
被相続人が遺言書を残さなかったときは、相続人の話し合いによって決めます。相続人全 員の合意があれば、法定相続分に従わず、自由に決めることができます。決まったら「遺産 分割協議書」を作成して、相続人全員が署名、押印して一人ひとりが保管します。これが考 えられる限り最高の平和的な遺産相続といえます。 しかし、そんな理想的な遺産相続協議ばかりではない。
中には、たった一人が異議を唱え たため話し合いが整わず、それがきっかけで大モメということがあります。そういうときは、 いくら話し合ってもまとまらないことが多いので、家庭裁判所に調停を申し立てることにな ります。

遺言書は絶対に「書いたほうがいい」時代になりました

いまは調停、審判の事例が急増しています。
調停では調停委員が各相続人の事情を考慮しな がら公平で皆が納得できるような分割案を考え出しますが、それでも不調に終わることがあ ります。そのときは家庭裁判所に審判を仰ぐことになります。
「モメる相続」とはこういうことです。いままで仲良しだった親族が、遺産をめぐって泥仕合をする。故人にとっても、当人たちにとっても、こんな悲しい、つらい体験はありません。 ストレスもたまり、普段の生活にも支障をきたします。

そんなことにならないように、遺産をのこされる方は遺言書を書く必要が出てきています。
仮に「法定相続でよい」と思っても、ちゃんとその旨書いたほうがいい。生涯に1回しかない 遺言メッセージは大きな効き目があるからです。そのほうがモメごとは確実に減ります。 また、法定相続とは別の思いのある人も増えてきています。先にも申し上げた価値観の多 様化で、結婚のスタイルも変わってきたからです。
また高齢化がすすんだ結果、新しく生じた相続の姿もあります。

「あげたい人にあげる」には遺言書を書くしかありません。

あげたい人にあげる事例は千差万別ですが、時代が作り出した新しい傾向として次のよう なケースがあります。

 ◎子どもはいないので「妻(夫)に全額あげたい」けど、法定相続人がほかにも存在する。それらを何とか排除したい。
 ◎長年、秘めてきた妻以外の女性にも、何とか分け与えたい。
 ◎非嫡出子に法定以上の多額な遺産を与えたい。
 ◎妻亡き後、事実婚した女性にも妻並みの遺産を与えたい。
 ◎介護で尽くしてくれた恩人に遺産を分け与えたい。

こんな、望みを持つ方は、遺言書に書かなければ、思いは遂げられません。では、いった いどんな思いの人が遺言書を書いたらいいのか。

遺言書を絶対に書くべきなのはこんな人たちです。

  • ◎年齢が65歳以上なった人(家族をモメさせないために)
  • ◎マイホームを所有している人(自宅は立派な財産です)
  • ◎不動産など分割のむずかしい資産が多い人(これもモメる原因になりやすい)
  • ◎配偶者が死別してその遺産を相続している人(子どもが喧嘩しやすい)
  • ◎結婚しているが子どもがいない人(妻又は夫だけにのこせない可能性が大きい)
  • ◎2人以上の子どもがいる人(いくら仲良しでもお金は人を変えます)
  • ◎子どもたちの仲が悪い人(仲良くても心配なのに、まして……)
  • ◎相続人の経済格差が大きい人(のこす人の気配りです)
  • ◎親族以外にも遺産をのこしたい人(思いをとげるには遺言書が不可欠)
  • ◎内縁関係の人がいる人(思いやるのが人の道)
  • ◎複数回結婚して、それぞれに子どもがいる人(モメる火種は消しましょう)
  • ◎会社を経営している人(事業承継は重要問題です)
  • ◎アパート、マンションなどの賃貸物件を所有している人(上に同じ)
  • ◎ペットにも遺産をのこしたい(ペットへの愛情もいまは公認されています)
  • ◎葬儀や墓に自分なりの注文がある(葬儀の多様化もすすんでいるので)

夏季セミナーのテーマは「遺言書作成の基礎知識」です。

艱難辛苦を乗り越え資産をのこされた方の努力は並大抵のものではないはずです。
それをめ ぐってのこされた家族が相続争いを起こすことは断腸の思いでしょう。のこす側の 最後にして最大の責務は、家族みんながのこしてくれたことを心から感謝し、みんなで仲良く 暮らせるよう、生前にしっかりと法的対策を研究しておくことです。

その際、被相続人の思い入れと確固たる意思を表明するのが遺言書。 自分の意思を実行可 能な形で、余すことなく伝え、しかも法律的に瑕疵のないものにするには、遺言書を正しく作成することが絶対条件です。

本セミナーはホームページ上で、 テーマわけして、ネットセミナーを開催いたします。

次回のテーマは、 「遺言の基礎知識」と題して自筆証書遺言、公正証書遺言の区別と、法的に間違いのない遺言書の作成テクニックを公開します。